齧りかけの林檎
第13章 ● 君の優しさ ♀side
歩くんがリビングに戻るのを見て、
食器を洗い始める。
食器を一通り洗って、
食器についた泡を濯いでいると
後ろから誰かにぎゅっ、とされた。
誰かなんて、
一人しかない。
歩くんしか、いない。
食器を濯ぐ手が止まる。
「あ、歩・・・くん?」
「ゆりさん・・・」
歩くんが囁くように、わたしの名前を呼ぶ・・・。
蛇口から流れる水音が、すごく響いて聞こえる気がする。
「おれと・・・つきあって・・・?」
【第13章 君の優しさ ♀side END】