齧りかけの林檎
第4章 ● 待つ君の ♂side
昨日は眠れなかった。
ドキドキしすぎて、
彼女の笑顔、
彼女の声を思い出して。
こんなにドキドキしたことってあるか?
家に帰るとオカンに、
「あんたどうしたのその顔
すっごいにやけてるけど」
なんて言われてしまった。
「え?!
そ、そんなことないと思うけど!?
あ、あのさ!
雨で濡れちゃったから
先に風呂入ってくるわ!」
脱衣所の鏡で自分の顔を見た。
ものすごくにやけた顔の、おれ。
き、きもちわりぃ・・・。
でも浮かれないなんて無理だった。
明日も彼女に会えるのだから。
それも、おれとの待ち合わせなのだから。