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神隠しの杜

第19章 【彼岸花編】追憶

次の日も緋葉と雨芭はここに来てやはりお社の屋根の上にいた。



今日は何やら手に持っている。彼岸花が何だろう、と首を傾げた時雨芭が得意気に言う。



「俺、怒られるから内緒で持ってきた。保存食の干し芋」

「雨芭……それは誉められた事じゃないだろうが。オレは貴子さんに干し柿もらった」

「あのおにばば!?」

「鬼婆って……貴子さんの事なんだと思ってるんだよ」

「緋葉のばーちゃんだろ?」

「……雨芭の名前出すとどうりで怒るわけだよ。いいか、今度ちゃんと謝らないと駄目だからな?」

「はいはい」

「返事は一回」

「はい……緋葉って、貴子さんより怖い」

「普通だよ」



一通り話すと二人は持ってきた保存食を仲良く食べ始めた。



彼岸花はおいしそうに食べる二人を見ながら、三人で食べる姿を思い描く。



“緋葉と雨芭の友達”



これが叶ったら、もう何も望まない。



彼岸花の思い描く夢には、緋葉と雨芭がいつもいた。その中に自分もいて、動けるようになった人間の自分は三人と一緒に走り回っている。



二人の時間を一緒に共有するのがただ幸せだった。



こんな日々が続いていって、ある日彼岸花は風が運んできた不穏な噂に驚愕した。



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