テキストサイズ

神隠しの杜

第19章 【彼岸花編】追憶

緋葉と雨芭が帰ってから彼岸花は、夜空にぽっかり浮かぶ月を眺めている。



綺麗な満月だった。



彼岸花は今日の月が今まで一番綺麗だと思った。今までもよく月を見ていたが、綺麗だと思いはすれどここまで心を持っていかれたのは初めてだ。



考えなくても、なんとなく彼岸花はわかっていた。



緋葉と雨芭に出会ったから。



『明日もまた会えるように、祈らなきゃね』



彼岸花祈った。



祈ったところで意味があるのかわからなくても、それでも祈りたかった。人間が信仰している神様がもしかしたら、叶えてくれるかもしれない。



彼岸花も人間と同じように、いつしか神様を信仰するようになった。



“神様はちゃんといて、助けてくれる存在”



なんだと、信じて一度も疑わなかった。のちにこの考えが、甘い考えなんだと思い知らされるまでは。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ