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神隠しの杜

第2章 緋葉と夕羅

唯一強く願う、あたりまえの願いを言えば、夕羅が着物の袖口を口元にあてくすくす笑う。



「帰れないのに」



緋葉は鋭い目付きで夕羅を睨んだ。



「夕羅」

「だって、そうでしょう?緋葉が調べて、確信できる事実を手に入れたというのに」

「……ちょっと席を外してくれ」

「いいわ、緋葉がわたしから離れていかないのなら」

「……」



緋葉に口づけをすると、元から何もいなかったように、夕羅の姿は消えた。



「……お前、名前は?」

「歩」

「歩か――いい名前だな」

「……あ、ありがとう」






帰れないのに。






そう言った夕羅の言葉が、頭の中から離れなかった。






あれはどういう意味なのだろう…………?






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