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神隠しの杜

第2章 緋葉と夕羅

緋葉が抑揚のない口調で言った。



「はやく帰れ。じゃないと、ここから……帰れなくなる」



どういう意味だ――



歩は頭の中で緋葉の言った言葉の意味を考えるが、思い浮かぶものは、負の事ばかりである。



「……緋葉」

「名前知ってるんだな」

「話し声が、聞こえたから」

「そうか。お前は何を問う?聞かなくともわかるが、教えてくれ。

言葉は言霊だ。いざとなった時、お前を救う武器になるかもしれない」



歩は警戒心こそ解けないものの、緋葉を信じてみてもいいかもしれない、と思った。






「俺は、元の場所に戻りたい」






この他に何の願いがあると言うのか。



答えをわかっていても聞いたのは、自分で願い口にしなけれざ意味がないから――なのだ、と歩は解釈した。



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