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神隠しの杜

第5章 神隠しの正体

毎日同じ空を見てるのに、と思わず自分で笑ってしまった。


それから、緋葉はふと何かを思い出したように呟く。



「歩――過去に、お前と同じようにここへ迷い込んだヒトがいる。おれもすっかり忘れていたが……ここに長い間いると、必然と忘れてしまう」

「必然?」

「記憶した事を忘れたくなくても、ずっと覚えていられないんだよ。ヒトで例えるなら、必死で覚えた事を、ずっと覚えていられない事だ。

すべてを覚えていられないわけじゃないし、いつ思い出すかはバラバラだが、ずっと忘れているわけでもない」

「そう、なんだ。俺は大丈夫なのか……?」

「ああ、お前はおれと違ってまだ、ヒトだから。だが、ヒトである事を外れてしまえば――神隠しとなる」



歩は息を飲んだ。






神隠しとなれば、永遠にヒトには戻れなくなる。






今はまだヒトだから、まともな、あたりまえの反応が出来るのだと。






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