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神隠しの杜

第9章 もう二度と戻れない

鼓動が激しくなる。



嫌な予感がした。一刻でも早く現実に戻らなければと思うが、緋葉は首を振る。



「ふつう、神隠しに遭えば還れないのが定め。それに、歩はどうやらおれに一番近いようだ」

「意味わかりませんよ……」

「似ている、って表現の方がいいか。血の繋がりや生まれ変わりみたいな感じに近い」

「……それが、俺の神隠しに遭った原因ですか?」

「ああ。神隠しそのもので近いからだ、少しずつ神隠しへと変化しつつある」

「…………………………あはははは!!!」



歩が突然笑いだす。傍から見れば、気に触れたとしか思えない光景だろう。



「歩…………」

「いっそ出られないなら、死んだ方がマシですよ……もう、終わりにしたい」



緋葉が歩に近づこうとした時、くすくすというあの、少女独特の楽しそうな笑い声が響く。



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