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神隠しの杜

第9章 もう二度と戻れない

どこからか懐かしい童謡と共に、幾つもの手鞠がころころ……地面を転がっていく。



「…………夕羅」

「なあに緋葉」



いつの間にか緋葉の首に腕を回し、そこにいた。



「おれの願いとどうして、いつも異なる事をする?」

「緋葉に好意持つ子はみんな嫌い、特にあの子、冬音は絶対許さない。真冬も、みーんな苦しめて苦しめて狂って壊れていけばいい」

「……」

「ねぇ緋葉、真冬の命じき尽きるわ。さすがにかわいそうだから、最後に冬音に逢わせてあげようと思って……深い深いあの場所へ落としてあげたの」



緋葉は唇を噛みしめる。






二度と戻れないのなら、緋葉も歩と同じ気持ちだった。






ただし、それが許されるのなら。






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