テキストサイズ

20年 あなたと歩いた時間

第11章 手探りの日々

陽子叔母さんから、荷物が届いた。
何ヵ月かに一度、色々なものを詰め込んだ
段ボールが送られてくる。
別に頼んだわけじゃないのに
いまアメリカで流行っているお菓子だとか
ベストセラーの小説だとか(もちろん英語版)
妙にサイズの合っている洋服だとか。
そんなものがごちゃごちゃと
詰め込まれている。
母さんは、結構楽しみにしていて、
こっちからは、アメリカでは手に入りにくい
昆布やら鰹節やらの日本食を送っている。
その昔、流星の母親がそうやって
陽子叔母さんにしていたらしい。
それを今、リビングで広げている。

「うわ、このジャケットかわいい!ね、まだいける?若すぎない?」

あつらえたのか?と思いたくなるほど
ジャストサイズのジャケットは、
ちょっとまぶしいレモンイエローだ。

「いいんじゃね?実際若いんだし」

僕は思ったままのことを言った。
友達の親よりもずっと若い母さん。
昔は気にならなかったけど
最近よく言われる。

「なーんか、生意気な言い方。あ、これ広輝にじゃない?」

小さな箱にはiPodと書いている。
え、マジ!?

「欲しかったやつだ。母さんが買ってくれなかったやつ」
「いちいちイヤミね。良かったじゃない、手に入って」

僕は早速箱を開けて、取説を…英語だ。
当たり前だけど、iPodも電源を入れたら
英語だらけの画面が表れた。

「夕飯、7時でいい?今日要が来るんだけど」

母さんが、陽子叔母さんからの手紙を
読み終わって言った。
ウキウキした気分が一気に下がった。
なんでいちいち聞くんだよ。
もう決まってるくせに。
要はいつも週末、うちに来て食事していく。
普段なかなか会えない二人の、
唯一のデートだ。
二人で外食すればいいのに、
変な気を遣いやがる。

「じーちゃんとラーメンでも食いに行こっかな」
「え?なんで?」
「たまには外でデートすれば?」

僕はガサガサっとiPodを箱にしまい
母さんの返事も聞かずに二階に上がろうと
した。

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