
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
圧倒的な力が、僕を包んでしまった。
もう、逃れることはできないだろうし、
逃げるつもりもない。
僕は自分の中に発生した、
宇宙の爆発並みのエネルギーを、
走ることでしか解き放つ術を知らなかった。
校門を出ると、足は自然と市営グラウンドに
向かった。
鞄に、いつもスパイクを入れている自分が
おかしかった。
流星。
おまえが撒いた目印の石ころを、僕は
ひとつずつ拾い上げていく。
全部拾ったら、どこに着くのか
見当もつかないけれど、それがきっと
僕がこの世に存在する意味なんだろ?
夕方の早い時間のグラウンドは、
小学生のサッカー教室が行われていた。
隣のトラックでは、大学生らしき人達が
タイムを計っていた。
今日は無理かとあきらめて帰ろうとすると
目が合った。
この間の、少年野球の監督だった。
「…ちは」
中途半端な挨拶をしてしまったために、
監督がこっちに走ってきた。
今日は大学のロゴが入ったジャージを
着ている。
「こっちが本業。大学の陸上部でコーチしてるんだ」
「そうだったんですね…今日は場所、ないっすね」
「一緒に走る?記録会、もう終わってるし、みんな適当にやってるから」
コーチは、腕時計を見ながら僕を誘った。
別に誰が走っていようが、構わない。
走る時はひとりだ。
「じゃあ、アップしたら走らせてもらいます」
ジャケットとシャツを脱いで
ジャージをはおると、春の生暖かな風が
トラックを吹き抜けた。記録会か。
この風ならいいタイムが出たんだろうな。
ストレッチをしながら、僕は周りを見渡した。
大学生って、思うほど大人じゃないな。
仲間同士でじゃれあってたり、
ひとりで携帯いじってたり、
教室での風景とさほど変わりのないようにも
見える。
そんななのに、
流星は父親になろうとしていた。
男がその覚悟をするのは、
母さんのそれとは少し違うだろう。
そこにどんな理由があったにせよ、
例え自分が間もなくこの世を去ると
知ったとしても、だ。
もう、逃れることはできないだろうし、
逃げるつもりもない。
僕は自分の中に発生した、
宇宙の爆発並みのエネルギーを、
走ることでしか解き放つ術を知らなかった。
校門を出ると、足は自然と市営グラウンドに
向かった。
鞄に、いつもスパイクを入れている自分が
おかしかった。
流星。
おまえが撒いた目印の石ころを、僕は
ひとつずつ拾い上げていく。
全部拾ったら、どこに着くのか
見当もつかないけれど、それがきっと
僕がこの世に存在する意味なんだろ?
夕方の早い時間のグラウンドは、
小学生のサッカー教室が行われていた。
隣のトラックでは、大学生らしき人達が
タイムを計っていた。
今日は無理かとあきらめて帰ろうとすると
目が合った。
この間の、少年野球の監督だった。
「…ちは」
中途半端な挨拶をしてしまったために、
監督がこっちに走ってきた。
今日は大学のロゴが入ったジャージを
着ている。
「こっちが本業。大学の陸上部でコーチしてるんだ」
「そうだったんですね…今日は場所、ないっすね」
「一緒に走る?記録会、もう終わってるし、みんな適当にやってるから」
コーチは、腕時計を見ながら僕を誘った。
別に誰が走っていようが、構わない。
走る時はひとりだ。
「じゃあ、アップしたら走らせてもらいます」
ジャケットとシャツを脱いで
ジャージをはおると、春の生暖かな風が
トラックを吹き抜けた。記録会か。
この風ならいいタイムが出たんだろうな。
ストレッチをしながら、僕は周りを見渡した。
大学生って、思うほど大人じゃないな。
仲間同士でじゃれあってたり、
ひとりで携帯いじってたり、
教室での風景とさほど変わりのないようにも
見える。
そんななのに、
流星は父親になろうとしていた。
男がその覚悟をするのは、
母さんのそれとは少し違うだろう。
そこにどんな理由があったにせよ、
例え自分が間もなくこの世を去ると
知ったとしても、だ。
