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20年 あなたと歩いた時間

第1章 14歳


「今日から、冬だね」

流星と同じことを真緒も言った。

「…今年は私じゃなくて、みんなが私に言うんだ」
「ずっと一緒にいるんだもん、もう言わなくてもわかるじゃん?」

その言葉に、なぜか涙が溢れた。
立ち止まったまま動けなかった。
ひんやりした風に、下ろした髪がなびいた。
泣き顔を隠す暇もなく
おでこも全開になった。

「ちょっと…のぞみ、なんで泣いてんの?」
「真緒…」
「ん?」

優しい表情で真緒がのぞきこんだ。

「まおぉー…」

冬の入り口、学校に続く坂道の途中。
言葉では説明できない気持ちに
すっぽり覆われた私は、
ただ泣くしかなかった。
不安でさみしくて。

「ずっと一緒にいたのに…どうして最近みんなバラバラなの…前みたいに一緒に帰ったり、勉強したり…四人でいたいよ…」
「のぞみ…」
「真緒は先輩と付き合うし、要は私達のこと避けてるし…流星は何だか元気なくて…私…私だけ…」
「違う違う、堀川先輩は!」

通学路だということも忘れて真緒は
大声で叫んだ。私は涙が止まるほど驚き、
顔を上げた。

「違うよ、堀川先輩とは付き合ってない。私、好きな人いるから」
「真緒…」
「別に隠すつもりもないけど、要のことが好きなの。ずっと前からね」

要も、真緒も突然すぎる。
この二人に私は驚かされてばかりだ。

「好きって…どんなふうに?私も、要のこと好きだよ?流星のことも、真緒も…」
「多分、のぞみが思ってるのとは違うと思う。…よくわかんないけど、言葉にするのは難しいかな」
「真緒…」

私が真緒が言う意味を知るのは、
まだ後のことだ。
落ち葉の舞う通学路で見せた真緒の横顔を、
私はずっと忘れないと思った。

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