
20年 あなたと歩いた時間
第12章 君が生きた日々
1995年1月16日。
ひさしぶりにのぞみと帰省した。
僕は、残酷な人間だっただろうか。
のぞみに、守れない約束をたくさんした。
結婚もできなければ、お腹の子どもを一緒に
育てることもできない。
それはただの願望で、いや、正確に言えば
この世に対する僕の未練だ。
僕は、非力ながら新しい仮説を十河先生の
研究室に送った。
いつか、だれかがこの仮説を立証してくれる日
が来ると信じて。
のぞみ。
これから長い間、つらい思いをするだろう。だけど君はひとりじゃない。
そのお腹に宿った命は、もしかしたら明日の
僕かもしれない。また、会えるかもしれない。
だから、どうか。
泣かないで。笑っていて。
僕はそんなことを思いながら眠りについた。
そして、明け方。
とてつもない揺れがこの街を襲った。
揺れが収まると、僕は自分が動けないことに
気づいた。
手には、震えながら光るポケットベルが
握りしめられていた。
『あきらめないで』
ああ。そうだった。
僕は父親になるんだった。
あきらめては、いけないんだ…。
その時、声がした。聞き間違えるはずのない
のぞみの声。
「いま、死ぬわけにはいかないの!!」
半狂乱になって叫ぶのぞみの声が、耳に
届いた。
すぐ近くにいるのはわかるのに、声もでない。
僕はここにいる。
まだ、あきらめては、いないよ。
まだ。
まだ…。
ごめんな、のぞみ。
最後まで悲しい思いをさせた。
この世の底、深く…光の、届かない場所へ、僕は…
ひさしぶりにのぞみと帰省した。
僕は、残酷な人間だっただろうか。
のぞみに、守れない約束をたくさんした。
結婚もできなければ、お腹の子どもを一緒に
育てることもできない。
それはただの願望で、いや、正確に言えば
この世に対する僕の未練だ。
僕は、非力ながら新しい仮説を十河先生の
研究室に送った。
いつか、だれかがこの仮説を立証してくれる日
が来ると信じて。
のぞみ。
これから長い間、つらい思いをするだろう。だけど君はひとりじゃない。
そのお腹に宿った命は、もしかしたら明日の
僕かもしれない。また、会えるかもしれない。
だから、どうか。
泣かないで。笑っていて。
僕はそんなことを思いながら眠りについた。
そして、明け方。
とてつもない揺れがこの街を襲った。
揺れが収まると、僕は自分が動けないことに
気づいた。
手には、震えながら光るポケットベルが
握りしめられていた。
『あきらめないで』
ああ。そうだった。
僕は父親になるんだった。
あきらめては、いけないんだ…。
その時、声がした。聞き間違えるはずのない
のぞみの声。
「いま、死ぬわけにはいかないの!!」
半狂乱になって叫ぶのぞみの声が、耳に
届いた。
すぐ近くにいるのはわかるのに、声もでない。
僕はここにいる。
まだ、あきらめては、いないよ。
まだ。
まだ…。
ごめんな、のぞみ。
最後まで悲しい思いをさせた。
この世の底、深く…光の、届かない場所へ、僕は…
