テキストサイズ

20年 あなたと歩いた時間

第13章 そして

なんだ、今の…。

僕はいつもの時間に、いつも通り、自分の
ベッドで目が覚めた。
窓の外は、これでもかというほど晴れ渡り、
初夏のきざしを見せている。

なんだ…?

膨大な量の記憶が、ものすごい勢いで増えて
いく感覚。頭痛がする。
…あの手紙だ。
机の上いっぱいに広げた、流星から川辺先生へ
の手紙。
昨日競技場で見た、流星にそっくりな、
というか流星そのもの。

覚醒時の願望や欲望、思考が睡眠中に夢となり
あらわれるのは至極当然のことであり…。

違う。
そんな説明では、説明がつかない。

「…広輝?起きたの?お母さん、今日早番だから、」
「起きた!起きてる!大丈夫」

母さんが階段をあがってくる足音が聞こえて
慌てて叫んだ。

「広輝!早く降りてきて朝ごはん…」

ドアを開けた母さんが僕の顔を見て止まった。

「…起きてる。いま降りるって」
「…流星…」
「違うよ。何言ってんの」
「…あ。ごめん。あまりにも似てたから。
…お母さん、仕事いくから。早く降りてきなさい」

母さんはドアを開け放したまま、下に降りて
行った。
待って、母さん。
…聞きたいこと、ありすぎる。
あの夢は何だったの。僕は、誰なの。

『真島広輝だろ。見失うな。生まれ変わりなんかじゃない』

流星の声がした。

『伝わったか?どれだけ、おれがのぞみを失いたくなかったか。どれだけ、死にたくなかったか』

今までにない、切羽詰まった流星の声だった。

『どれだけ、おまえに会いたかったか』

なんだろうな。どうして、僕なんだ。
どうして、流星と母さんだったんだ。
それ以上、流星の声は聞こえなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ