
20年 あなたと歩いた時間
第5章 20歳
たったの二ヶ月ぶりなのに、
要は真っ黒に日焼けしていた。
「おかしいでしょ、コイツ。東京じゃ、日焼けしてないとモテないんだって。ていうか、モテたいんだって」
真緒が不機嫌そうにアイスティーのストローを
くるくる回した。
その横では金髪に近い髪色の要が、
昼間っからビールを飲んでいる。
「おまえ、どんな生活してんだ?東京で」
「普通だよ、普通。ちゃんと学校行って、ちゃんと学校行って、ちゃんと学校行ってる」
「は?大丈夫か?暑くておかしくなったのか。じゃあおれが診察してやるよ。服脱いで、ほら、脱げって!」
ふざけあう流星と要を見る、真緒の視線が
冷たい。
要がチャラチャラしているのは
今に始まったことではないが、
さすがにチャラさがハマりすぎて笑える。
「大丈夫だって、おれ幼稚園継ぐことにしたから。卒業したら帰ってくるって」
「マジ?!」
要以外の三人が声を揃えて言った。
あれだけ、幼稚園は弟に継がせて
自分は自由に生きると言っていたのに。
「卒業したら、こっち戻って保育専門学校に入って、幼稚園教諭の免許とる。んで、」
要はそこで一旦言葉を区切り、
真緒のほうに向き直った。
「真緒と結婚する」
いきなりの発言に、要以外全員が
呆気にとられた。
「…マジか」
流星はくっそー、と言って頭をかきむしった。
先越されるのかよ、とも。
真緒は、固まったまま動かない。
アイスティーの氷が溶けて、
からんと小さく音を立てた。
「『必ず最後に愛は勝つ』んだよ」
要はしたり顔で、真緒にそう言った。
ねえ、真緒。覚えてる?
幼稚園の頃、お泊まり保育で真緒が
おもらしで布団を濡らしちゃったことを、
要は自分がやったんだ、って言って
真緒をかばったよね。
小学校に入って、虫を捕まえて観察する授業で
虫が怖くて触れない真緒のために
要がたくさん虫を捕まえて、
真緒の虫かごに入れてくれたね。
中学生になって、
急に女の子たちの人気者になった要を見て
真緒は『調子に乗ってる』なんて言ってけど
本当は心配だったんだよね。
要が、真緒のことを好きだとも知らずに。
私にとって、
流星が大切な存在になったのと同じように、
真緒にとって要は誰よりも大切だった。
真緒は許してくれるかな。
いま、私と要が
一緒に生きて行こうとしていることを。
要は真っ黒に日焼けしていた。
「おかしいでしょ、コイツ。東京じゃ、日焼けしてないとモテないんだって。ていうか、モテたいんだって」
真緒が不機嫌そうにアイスティーのストローを
くるくる回した。
その横では金髪に近い髪色の要が、
昼間っからビールを飲んでいる。
「おまえ、どんな生活してんだ?東京で」
「普通だよ、普通。ちゃんと学校行って、ちゃんと学校行って、ちゃんと学校行ってる」
「は?大丈夫か?暑くておかしくなったのか。じゃあおれが診察してやるよ。服脱いで、ほら、脱げって!」
ふざけあう流星と要を見る、真緒の視線が
冷たい。
要がチャラチャラしているのは
今に始まったことではないが、
さすがにチャラさがハマりすぎて笑える。
「大丈夫だって、おれ幼稚園継ぐことにしたから。卒業したら帰ってくるって」
「マジ?!」
要以外の三人が声を揃えて言った。
あれだけ、幼稚園は弟に継がせて
自分は自由に生きると言っていたのに。
「卒業したら、こっち戻って保育専門学校に入って、幼稚園教諭の免許とる。んで、」
要はそこで一旦言葉を区切り、
真緒のほうに向き直った。
「真緒と結婚する」
いきなりの発言に、要以外全員が
呆気にとられた。
「…マジか」
流星はくっそー、と言って頭をかきむしった。
先越されるのかよ、とも。
真緒は、固まったまま動かない。
アイスティーの氷が溶けて、
からんと小さく音を立てた。
「『必ず最後に愛は勝つ』んだよ」
要はしたり顔で、真緒にそう言った。
ねえ、真緒。覚えてる?
幼稚園の頃、お泊まり保育で真緒が
おもらしで布団を濡らしちゃったことを、
要は自分がやったんだ、って言って
真緒をかばったよね。
小学校に入って、虫を捕まえて観察する授業で
虫が怖くて触れない真緒のために
要がたくさん虫を捕まえて、
真緒の虫かごに入れてくれたね。
中学生になって、
急に女の子たちの人気者になった要を見て
真緒は『調子に乗ってる』なんて言ってけど
本当は心配だったんだよね。
要が、真緒のことを好きだとも知らずに。
私にとって、
流星が大切な存在になったのと同じように、
真緒にとって要は誰よりも大切だった。
真緒は許してくれるかな。
いま、私と要が
一緒に生きて行こうとしていることを。
