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箱……弐

第1章 箱

「花子…水をくれ―――…」



「花子…窓を開けてくれ…」



「花子…布団を外してくれ」





父のかすれた声―――――…



布団のなかで…



私をひたすら呼ぶ声――――――…






「はい、はい――――…」



最初は文句ばかり言っていた…




何で私が―――――――…



何で私が―――――――…





役場の福祉課にも…ヘルパーの事や介護の事で相談した―――…



が、毎年――――…担当する社員は、異動だの…配置変えだとかで…


話は毎回ふりだしに戻る…





毎年、新しい担当に………


同じ事を説明する―――…







そのうち……


打って響かぬ現実に―――…




期待をしなくなった―――…






ただ…毎月――――――…


年金を支給してくれるだけでも良しとした――――…




私は、妥協したのだ―――…



そして、



普通の介護家庭には……



世間も国も―――――…




興味がない事が解った――…



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