誘惑のサンタクロース
第1章 ☆
冷たくなった指先をあたためようと
両手を顔の前に持ってきて、
ハァーッ、ハァーッと
指先にあたたかい息を当てた。
ザザッと砂利の踏まれる音が
前方から聞こえ顔を上げると、
知らない男の人が立っていた。
顔は暗くてあまり見えないけれど、
明るめの髪が月明かりで光って見えた。
「こんなところで何してるの?」
目の前に立っている男の人に言われた。
どう答えていいかわからない。
家に居たくないと言うか?
初めて会った男の人に
そんなことを言ってもしょうがない。
「星、見てた」
これはこれで本当のことだ。