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春雪 ~キミと出逢った季節 ~

第2章 桜の木の下で

「……もう一度聞くけど

抵抗しないなら、このままするよ」



彼の指が、私の下唇をゆっくりとなぞる。



「…………」



……抵抗って


相手に対して、歯向かって、逆らうことだよね。


見ず知らずの人に、こうして公共の場で突然抱きしめられて


それでいて今からキスしますって宣告されたのなら


文字通り、ここで彼を突き飛ばすのが通常の流れだ。


……経験が無いとはいえ、26にもなる大人の女なら誰でも分かること。




……だけど……




「……ごめんなさい。

私、今、辛うじて口は動くのですが」


「…………!」


「か、体が動きません……」



もう半ばパニック状態のはずなんだけど、どうしてか気持ちは落ち着いていて


正直に自分の状況を説明すると


ド至近距離で、彼はふっと笑った。


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