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春雪 ~キミと出逢った季節 ~

第2章 桜の木の下で

「……さっき
男に抱きしめられたこと無いって、言ってたよね?」

「………!」

「それなら、今のも初めて?」




再び崩れそうになった私の背中を、彼の左手がしっかりと支えた。


答えは頷くだけなのに、衝撃で何も言えない。




「………明後日の水曜日。

あんた、今日という日を後悔すると思うよ」




私の唇をぺろっと舐めてから、そう言った彼は


長いまつ毛を揺らして、一度だけ瞬きをすると


深い瞳で、真っ直ぐ私を見つめた。




「……後、悔……?」


「俺はその逆だけどね。

こんなに可愛い人だって、知ることが出来たから」




………ふわふわの金髪に、ひとひらの桜の花びらを乗せて


彼は、もう一度優しく微笑んだ。









「キスしてごめんね。


………センセイ」



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