春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第11章 どうしようもなく、惹かれる心
「1年前から、ずっと会社を辞めたくてさ」
鼻でなんとか呼吸が出来るけど、痛くて体が震えてくる。
だけど芹澤さんはまるでお構いなしに、淡々と喋りはじめた。
「沙月を宮本に盗られた辺りから、なんだか周りの奴らの態度も変わってきてさ」
「………!?」
「天才的に仕事が出来る俺が、なんでこんな扱いをされなきゃいけないのかって」
……な、にを言ってるの?
沙月を盗られたって……なんの話?
「そうでなくても、昔から評価されるのはいつもあいつらだった。
黄金世代っつっても、結局は宮本と加賀谷の2人勝ち」
「…………」
「上司も、女も、俺に見向きもしない。
ずっと積み重なってきた苛々が爆発しそうで、だったらいっそのこと自ら辞めてやろうかと」
「………っ」
「ま、俺は必要とされてる人間だから。
就職先なんていくらでもあるからね」