春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第11章 どうしようもなく、惹かれる心
「……どうして、こんなことするんですか?」
背中を壁に押し付けられながらも、負けるもんかと思って睨みあげる。
私、今すっっごく怒っているんだもの。
「どうして、こんなことすると思う?」
相変わらずクスクスと笑いながら、芹澤さんは掴んだ手首に更に力を入れてくる。
「もしかして、何かを見たのかな?」
「……見ました。
そして、気付きました」
「へぇ、何に気付いたの?」
「………」
「蓮見。僕に教えてくれる?」
……私は、絶対に間違えない。
あの繊細なタッチ、美しい曲線美
CGに起こす前、同じ部署にいる私だからこそ見る事ができる
世界にひとつしかない、彼にしか描けないデザイン画。
「……ドロボウと、同じですよ」
「……泥棒?」
「人のデザインを許可無く盗みだすのは、泥棒です!」
「…………」
「どうしてこんな…… むぐ……っ」
私が叫び声をあげたと同時に
芹澤さんの大きな手のひらで、口全体を塞がれた。