春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第11章 どうしようもなく、惹かれる心
宥めるように、私の頭にポンッと手を置くと
「春菜が平気でも、俺は怖かったよ」
「………!」
遼くんはもう片方の手で、自分の顔を覆った。
「倒れてるお前を見た瞬間、血が逆流して
……あいつを蹴っ飛ばしたのも、無意識」
「………っ」
「とにかく、無事で良かった」
手を外した遼くんが、柔らかく微笑む。
言葉遣いも、いつになく優しい。
……トクン、トクンって、心臓が鳴って
心の奥に閉じ込めた想いが、溢れそうになってしまう。
「ほら、手ぇ出せ」
地面に膝を立てて、ゆっくりと体を起こすと
遼くんが私の右手を指差した。
「……手?」
「逆。 擦りむいて血が出てる」
「………!」
同じく立ち上がって、自分の手のひらを覗きこんだ私。
言われて反対側に返すと、手の甲が赤く滲んでいた。
細かい砂利もいっぱい付いている。