春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第11章 どうしようもなく、惹かれる心
“ てめぇが今ここで春菜にしたことを、俺は一生忘れない ”
“ ごめんな、春菜
怖い思いさせて、悪かった ”
「…………っ」
視界がぼやけて、よく見えない。
路地の出口へと歩き始めた遼くんに、気付かれないように
ストールを鼻の上まで引っ張り上げて、必死に顔を隠した。
……遼くん、ダメじゃん。
芹澤さんもそうだし、山田さんも○○木工の社員さん達もいたのに
私のこと、思いっきり名前で連呼しちゃってたよ?
そう言う私も、後輩のくせに敬語も使わないで
加賀谷さんって、名字で呼ぶのを忘れてたけど
……奥さんがいるのに
そんな優しく微笑むなんて、勘違いしちゃうじゃない。
“ ありがとう ”
「……ふ……っ」
……好きだよ、も
愛してるも
この先ずっと、聞く事は出来ないけど
遼くんが言ってくれた、その一言だけで
私の心は、どうしようもなく貴方でいっぱいになってしまう。
………零れ落ちないように、必死に堪えているのに
私の瞳からは、涙が溢れて止まらなかった。