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春雪 ~キミと出逢った季節 ~

第3章 8年めの片思い

意味不明、と溜息をつかれて


沙月に引きずられるようにして、エレベーターに入った。



「二日酔いの過ちか~~。
聞きたいけど聞かないでおくわ」

「……ありがとう」

「私も何度もあるから、分かるのよ。
他人から見たら不可解な行動でも、当の本人は真剣なのよね」

「…………」

「とにかく放っておいてほしいのよね~~」



自分で言いながら頷く沙月の、ミディアムボブの髪が揺れる。


パールのピアスと、控え目なグロスがキラッと光って


もともと美人なのに、入社して今日で5年目となった今


さらに磨きがかかっているのは、やっぱり彼氏の存在があるからだろうか。



「ほら、着いたよ春菜」



沙月に見惚れてボ~ッとしていた私は、その声でハッと我に返ったけど



「わわわっ、待って待って……!」



閉まりかけのドアに一度挟まって、ガンッと音を出しながら通路に出た。

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