春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第12章 春の嵐
……私が泣き疲れるまで、ユキは抱きしめてくれていて
ベッドに入ってからも、ずっと手を繋いでくれていた。
……優しく、触れるだけ。
キスも交わさず、体を重ねることもなく
ただ、傍にいてくれる。
「いやいや、マジで今相当我慢してるからね」
仰向けで天井を見上げたまま、隣りでユキが溜息を漏らした。
照明を落とした薄暗い部屋に、お互いの呼吸だけが聞こえてる。
「……ユキ……」
貴方に抱かれる、極上の快感を知ってしまったから
こうして寄り添っていると、心も体も求めてしまうけど
……私は、この先
寂しいなんて、言うことは許されない。
それが、凌くんから離れられない……
……私の運命なんだ。
「……ごめん、ね」
謝ることしかできなくて、そっと手を握り返すと
上体を半分起こして、私の体に布団をかけ直してくれた。
「春ちゃん、今度の土曜日空いてる?」
「土曜日?」
「うん、3日後」
体を横向きにしたユキが、腕枕をしてくれる。
予定が無いことを告げると、ユキは小さく微笑んだ。
「一緒に行ってほしい所があるんだ」