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春雪 ~キミと出逢った季節 ~

第12章 春の嵐


切なく微笑むユキ。


もう、心臓が壊れたように鳴り続けていて


私はそっとユキの顔に右手を伸ばした。



「……ユキ……」



もう片方の手を、反対側の頬に触れようとすると



「…………っ」



背中をぐっと引き寄せられて


ソファに座ったまま


私はユキの腕の中に包まれた。


細い腕で、ぎゅっと抱きしめられる。




「……俺のこと、利用すればいいのに」


「………!」


「前にも言ったけど

傍にいてくれるなら、どんな関係でもいいんだよ。

あんたにとっての2番目でいいし、寂しさの穴埋めで充分なんだ」


「………っ」


「7つも年下のガキが相手なんだから

嘘付いて、騙して、誑かすなんて簡単だろ?」




苦しいくらい、強く、強く抱きしめられる。


ユキの想いが、痛いほど伝わってきて


もう、涙で何も見えない。




「……ごめ……んね……っ」




絞り出すように、掠れる声でそう言うのが精一杯。


ユキの肩に顔を埋めて、込み上げる想いを押し殺すと




「……バカだね、春ちゃん」




耳の後ろから、ふっと柔らかい声が聞こえてきた。


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