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春雪 ~キミと出逢った季節 ~

第12章 春の嵐


「両親も、俺も。
毎週土曜日だけは、墓参りしないんだよ」

「………」

「あの人が、姉貴に逢いに来るから。
夫婦水入らずにさせてあげようって……そう決めたんだ」




……頭が混乱して、目眩までしてきて


ユキの声は、まるで水の中にいるみたいにくぐもって聞こえる。




だけど




「…………」




その時



後ろから、サクサクと小石を踏み潰す音が聞こえてきて



間違いなく、今この時は現実なんだって気付かされて



だんだんと、その足音が近付いてくると




「………!」




……風に乗って、ふわっと広がったユリの香り。


誰かが、私の少し後ろで止まった。








「………雪斗?」









……私ではなく、ユキの名前を呼んだ……その人の



低い声を聞いただけで、誰か分かるのは………




「…………」





スニーカーをキュッと鳴らして



振り返ったユキは、切なそうに微笑んだ。










「………久しぶり、義兄さん」




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