春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第13章 2人の秘密
“ 義兄さん ”
……柔らかく、ごく自然に
近付いてきたその人に、ユキが呼びかけると
あれだけ吹き荒れていた風が
空に舞い上がって、少しだけ弱まったように感じた。
でも
私はもう、全身が心臓になったように
ドクドクと激しい動悸がして止まらない。
「……ったく。
ちょっと見ねぇ間に、また成長しやがって」
……その口の悪さも、声の低さも
私が知っている、彼に間違いは無いけど
「………っ」
……こんな
こんなことって………
ユキが真っ直ぐ見つめる方向へ、震える足を回すと
白と淡い桃色の花束を、左腕に抱えたその人が
振り返った私に気付いて、目線をこちらに向けた。
「……春、菜……?」
会社じゃないから、名前で呼んでもいい。
だけど
その鋭い瞳が、大きく見開かれて
……遼くんは、少しの間ピクリとも動かなかったけど
暫くしてから、1歩私に近付いた。
「……お前、こんなとこで何してんの?」