春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第13章 2人の秘密
「つい最近まで、制服着てたと思ってたのに。
……雪斗ももう大学生か」
トルコキキョウの花びらを、そっと指で撫でて
遼くんがしみじみとそう呟くと、ユキは両手を上げて大きく伸びをした。
「まぁ、全然行ってないけどね。
卒業できんのかな~、俺」
「……おい、大丈夫かよ。
あんなクソ高ぇ学費払わせておいてダブったりしたら、お義母さん泣くぞ」
「ギリギリだった人に言われたくありません。
今でも有名だよ、単位強奪したって」
「強奪?」
「かの卒業生、デザイナー加賀谷遼は
教授に実力の違いを見せつけて、ひれ伏させたって」
「はは、ひでぇな」
ユキと一緒に、遼くんが声に出して笑った。
「………っ」
………もう、言葉が出てこない。
遼くんが、誰かとこんなに楽しそうに話すのは珍しいし
私の目の前で笑い合う2人は
本当の兄弟のように見えてきてしまう。