春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第13章 2人の秘密
「……春ちゃん」
2人の遣り取りを、半ば放心して見つめていると
小階段を降りて、ユキが私の前に立った。
「義兄さん、これから週末のデートなんだよ」
「………!」
「ごめん、ニアミスだった。
春ちゃんを姉貴に紹介するのは、また今度にするね」
「………っ」
「後で、ちゃんと説明するから。
……今日は、あの人達を2人きりにさせてあげて」
ドクドクと心臓の音が大きくなる。
お墓の前に佇む、遼くんの背中がすごく遠く感じて
胸がズキズキ痛んで、すごく苦しい。
「行こ」
「………」
ユキに促されて、震える足を一歩後ろへ戻す。
元来た方向へ、歩き始めようとすると……
「春菜」
後ろから、遼くんに呼ばれた。
「……ずっと黙ってたんだけど。
俺、嫁と離れて暮らしてるんだ」
「………!!」
「彼女のいる場所が、遠過ぎて
なかなか逢えなくてさ」
その低い声の方向へ、ゆっくりと振り返ると
青空を指さして、遼くんは優しく微笑んだ。