春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第13章 2人の秘密
「……ユキ……
……教えて、くれる……?」
込み上げる想いを、なんとか抑えて
手を伸ばして、ユキの右手にそっと乗せる。
「……お姉さん……桜さんは
ど、どうして……っ」
お墓に記されていた、遼くんの奥さんの名前を口にした瞬間
再び、強い風が舞って
首にかけていた私のストールが、ふわっと宙へ飛ばされた。
「…………」
ユキの大きな瞳が、色濃く揺れて
彼は、私から顔を逸らすと
「俺も、あの人と同じで
……恐怖症なんだ」
「………!」
「だけど
閉所や高所が苦手とか、そういった要因じゃなくて
……心的外傷……ずっと囚われてる」
ユキが目線を上げて、見上げた空に
飛行機雲が、真っ白な線を引いていた。
「消えるように、奪われてしまったから
乗れないんだ
……あの日から、ずっと」