春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第13章 2人の秘密
………ユキが絞り出すように言った言葉は
直接的な、答えでは無かったけど
飛行機雲を見つめていたユキが、そっと瞳を閉じて……
その姿が滲んで、段々とぼやけてしまう。
……月曜日、企画部の先輩と
海外出張を断った話をしていた時、遼くんが言っていたのは……
“ 船だったら行きますって言ったら蹴っ飛ばれそうになって ”
「………っ」
……胸が痛くて、この気持ちをどうしたらいいか分からない。
溢れる涙で、視界がぐちゃぐちゃになってしまって
思わず顔を伏せると……
「春ちゃん」
ユキの優しい声が響いた。
「きっと、姉貴が神様に頼んだんだよ」
「………!」
「あの日、春ちゃんを抱きしめてから……一緒に過ごした時間は短いけど
俺、春ちゃんを知れば知るほどに
きっとそうだって、思うようになったんだ」
……ユキ……?
その言葉の意味が分からなくて、再び顔を上げると
私の手をぎゅっと握って
「……なのに
なんで、好きになっちゃったんだろうね」
独り言のように、小さく呟いて
ユキは、切なそうに微笑んだ。