春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第15章 少しだけ
「ちょっと待ってて。
自販機で買って……」
財布を、取り出した
次の瞬間
「……春菜」
遼くんが、低い声で私を呼んで
歩き出そうとした、私の手を引き留めた。
「………!」
くいっと軽い力で引き寄せられて、びっくりして振り返る。
「……遼くん……?」
座ったままの遼くん。
何も言わないまま、私をじっと見上げている。
その、深い瞳を見つめ返す……その前に
私は小さな違和感に気付いて、そっと視線を落とした。
「…………」
包み込むように、私の手を握る遼くんの左手
その薬指の付け根に
くっきりと、白い線の跡が残っている。
……そう
いつも、見るたびに心が苦しくなっていた銀色のリングが
その指から外されていた。