春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第15章 少しだけ
……遼くんは笑っているけど
な、なんか急激に恥ずかしくなってきた。
芝生に寝っ転がる遼くんを、木の陰に隠れて見ていたのはまさに今この場所で
あの頃の記憶がリアルに蘇ってきて、顔に熱がこもる。
「……遼くん、ごめんね」
「あ? 何が?」
「いや……なんか
相当ストーカーしてたんだなって、改めて……」
しかも本人から言われちゃってるんだから、イタさ半端ないよ。
明後日から5月となる今日、この時間になっても気温は穏やかだけど
顔は熱いのに、吹き抜ける風が急に冷たく感じてきた。
「あはは、なんか寒くなってきちゃった。
って、私だけか」
「………」
「私、何か温かい飲み物買ってこようかな」
1人でベラベラ喋って、花壇からパッと立ち上がる。
食堂はお休みだけど、確か2号館の先に自販機がある。
「遼くんは、何がいい?」
こんな風に、遼くんとゆっくりお話できるなんて貴重だし
この先、この大学の構内には戻ってこれないから
もう少しだけでいいから、ここに居たい。