春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第15章 少しだけ
……遼くん……っ
「……りょう、く……」
………私の胸に、顔を埋めた遼くんを
私は抱きしめ返すこともできずに、ただただ呆然としてしまった。
芹澤さんを、蹴っ飛ばして助けてくれた時
あの時も、焦る姿を見てすごく驚いたけど
……こんなに弱くて、小さい遼くんを見るのは初めてだ。
「………っ」
想いがこみ上げてきて、目頭が熱くなる。
……ねぇ、遼くん。
貴方は、いつから1人だったの……?
会社のみんなが、愛妻家って騒ぎたてる度に
どんな想いで、その場を遣り過ごしてきたの……?
“ 毎週土曜日、週末のデート ”
“ 彼女のいる場所が遠過ぎて、なかなか逢えなくて…… ”
……きっと、遼くんの中で
奥さんは、生きているんだよね……?
それなら、どうして
愛の証である、指輪を外して
私のところに来てくれたの……?
……私
遼くんを
抱きしめてもいいの……?