春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第16章 サヨナラ、春ちゃん
「春ちゃん、こっちこっち」
「………!」
急に、頭の上から私を呼ぶ声。
驚いて顔を上げると……
「……ユキ……!」
「良かった。
ちゃんと来てくれたんだね」
「………っ」
エレベーターと階段のある、四角いコンクリートの天井から
ひょこっと顔だけ出したユキが、私を見下ろしていた。
……太陽に負けない、明るい笑顔。
「そこの角を曲がると、ハシゴがあるから。
登ってこれる?」
「……う、うん。
他に誰もいない?」
「いないよ、大丈夫」
右腕を伸ばして、ユキが指さした方向に進むと
3mほどの錆びた鉄の梯子があって、恐る恐る手と足をかける。
屋上からは、360度周りの景色が一望できて
高過ぎてちょっと恐怖さえ感じながらも、なんとかユキの元へとたどり着いた。