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春雪 ~キミと出逢った季節 ~

第16章 サヨナラ、春ちゃん


「……ほんと、色んな場所を知ってるのね」



下の広いスペースには、網のフェンスが囲ってあるけど


広さ3平米程のここは、ボイラー以外何も無くて、端っこに行くのは躊躇してしまう。



「サボリ魔だからね」



ふわっと風に靡く髪の間から、片耳に付けられたピアスが光って


白い歯を見せるユキは、相変わらずカッコイイ。


いつも派手な服装が多いけど、今日は全身モノトーンで


いつもよりも大人っぽく見えてしまう。



「……これ、ありがとう」



ユキが胡坐をかいて座る前に、私も腰を下ろして


カーディガンのポケットから、メモ用紙を取り出した。



「書類を置いたあと、急に手を握られたから驚いちゃった」

「うん、本当はメールしようと思ってたんだけど。
この前春ちゃんにやられた古風な呼び出しを真似してみた」

「………!」

「最後の授業だったしね」



……最後……


その言葉に、またきゅうっと胸が締め付けられる。


そんな私の顔を見て、ユキもどこか寂し気に微笑んだ。

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