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春雪 ~キミと出逢った季節 ~

第2章 桜の木の下で

「…………っ」




………あ、もしかして


抱きしめられてる?


全身に力が入らなくて


その引き締まった体に凭れかかってしまう。




「………大丈夫?」




背中に回された方とは、反対側の手で


頭をぽんぽんと優しく叩かれた。


………この人の声、低くもなく、高くもなくて、丁度良いというか……


なんていうか、さっき感じた春風のように心地良いなぁ。



「……すみません……」

「うん、いいよ」



さらにぎゅうっと抱きしめられて、彼との隙間は1ミリも無くなってしまった。


初対面の人と、一体私は何をしているんだろう。


いいよって言ってくれたけど、きっとこの人もこの状況を嘆いているに違いない。


………だけど


包まれている彼の体温が気持ちよくて


頭がぼーっとして、何も考えられなくなってしまう。

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