春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第7章 眠れない夜に、温もりを
「……遼くんが、飲み会に来てくれた」
瞳を閉じて、ぽつりと呟くと
大好きな遼くんの、クールな表情が浮かんでくる。
「私の隣りを空けておいてって、言ってくれた」
あんなに人気があるのに、真っ直ぐ私の傍に来てくれたんだよ?
滅多に笑わないのに、私だけには微笑んでくれる。
……ほら、少しだけ
塞いだ心に、柔らかい光が差し込んできた。
「……春菜って、名前、呼んでくれた……」
……大丈夫、大丈夫。
他の人には、誰にも言っていないもの。
遼くんも知らないし、想いを告げたりとか、絶対にしない。
………心の奥の、さらに奥で
叶わない恋心は、私だけの秘密にするから
遼くんにも
遼くんの奥さんにも
絶対に、迷惑をかけないようにするから………
「……よし!」
充電完了だ。
1人で呟いて、買ったコーヒーを口に運ぼうとすると
「…………!!」
その直前で
目の前から手が伸びてきて
持っていたカップを、ひょいっと奪われた。