春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第7章 眠れない夜に、温もりを
………次の瞬間
ユキの香りが、ふわっと広がって
「…………っ」
座ったままの私の額が、ユキの身体にくっついた。
一歩近付いたユキが、上半身を少しだけ屈めて
私の頭はすっぽりと抱え込まれる。
「痛いの痛いの、飛んでけ」
「………ふ……っ」
「春ちゃんを泣かせる奴の所に、飛んでいっちまえ」
………視界がボヤけて、目を開けていられなくなってしまった。
ユキの細い身体と腕は、私を隠すことは全然できていなくて
周りに座る人達が、ヒソヒソしてるのが聞こえてきて
………それでも
「……う、っく……っ」
「大丈夫だよ、春ちゃん。
……大丈夫」
……遼くんに片想いをして、7年
眠れない夜、1人で声を押し殺して泣いていた私が
初めて
他人の腕の中で、涙を流した。