春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第7章 眠れない夜に、温もりを
「……ユキ……」
掠れた小さな声で、彼の名を呼ぶと
ユキはコーヒーを花壇の横に置いて、私の頭を撫でた。
「……ユ、キ……」
「うん、春ちゃん」
「…………っ」
「春ちゃん、大丈夫?」
ドキドキと、心臓が異常な程鼓動を続けていてうまく喋れない。
それでも
ユキの笑顔と、髪を撫でる手があまりにも優しいから
胸の奥が、じんわりと温められる。
「わ、私……い、ま……」
「うん、今?」
「……ユキの声を聞けて
す、すごくホッとしてる……」
思ったまま、何も考えずにそう告げると
ユキは一瞬目を見開いたけど
「ありがとう。
俺も、春ちゃんに逢えて安心した」
長いまつげを揺らして
ユキは太陽みたいに明るい笑顔になった。
「泣いちゃえ、春ちゃん♪」
「………!!」
「見られないように、俺が隠してあげる」