言葉で聞かせて
第7章 過去
なんか、の言葉を続けようとした敦史を遮って店のキャストが声を掛けてきた
「おい敦史。店の前でお前待ってる奴がうるせぇぞ」
「あ?おぉ。悪いこの話しはまたな」
「うん。……あ、待って」
「ん?」
「今日のアフターって、菜摘?」
敦史は僕の質問に不思議そうな顔をした
「あ?菜摘のアフターお前じゃねえの?」
「違うけど……」
「俺はちげぇよ?じゃあな」
僕は今日アフターを受けてない
菜摘は前回敦史とアフターに行ってたみたいだから今日もそうかと思ったのに
違うんだ
最近変な行動が目立つ元恋人のことを思いながら僕は家路に着いた
家に帰ると、千秋さんも家に帰ってきていた
それも、珍しく起きている
「ただいま?」
僕が声を掛けると一瞬大きく肩を揺らした後振り返った
「おかえりなさい」と言いたげな表情で僕に微笑んだ千秋さんだけど、その大きな目の下にはクマが見える
…………やつれてる
何を言ったらいいのかわからなくて、僕は当たり障りのない話題で逃げた
「……お風呂には入りましたか?」
千秋さんは首を横に振る
以前より、筆談に応じることも少なくなった
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