言葉で聞かせて
第7章 過去
「……」
おずおずと差し出された菜摘の携帯電話を敦史が開く
「なんだ?これ?」
敦史は眉間に皺を寄せて呟いた
敦史の方へ近寄ろうとすると腕の中の千秋さんが身じろぎした
「?」
千秋さんは僕の胸に頭を預けたままじっと手を見つめていた
どれだけ千秋さんにとって嫌なものが写っているんだろう
書きかけの小説とか?
敦史に歩み寄るとそれに気づいた敦史が画面をこちらに見せてくれた
そこに表示されていたのは
「なにこれ……」
僕と菜摘のベッドでの写真だった
明らかな隠し撮り
葉っぱが写り込んでいるからホテル内の観葉植物か何かに仕掛けていたのだろう
敦史が操作すると次に表示されたのは敦史と菜摘のベッドの写真
これも、明らかに第三者が居なければ写せないようなアングルのもの
「おい」
敦史に声をかけられた菜摘はびく、と震える
「何でこんなもん持ってる?つーか何でこんなもんで千秋を脅してる?」
千秋さんが僕の着ていたシャツをぎゅ、と握った
「大丈夫ですよ」
と小声で言うと千秋さんは震える瞳で僕を見上げた
その目はまるで「ごめんなさい」と僕に謝っているみたい
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