テキストサイズ

言葉で聞かせて

第8章 猫に恋敵


僕が笑いかけると千秋さんも穏やかに笑う
すると敦史が僕達から離れて言った


「とりあえずさ、流のことはそのままほっとけよ」
「えっ……誤解させたままってこと?」
「あぁ。変に千秋の存在がバレたらまた可笑しな事考える可能性がなくもないだろ」


可笑しな事というのは恐らく菜摘のことを言ってるんだろう


確かに僕もあんなことがまた起こるなんてごめんだ


「仕方ないね。入ったばかりの新人さんに恨まれるのは心が痛いけれど」
「バレないとも限らねえけどな」


千秋さんは再びペンを手に取った


『お客さんにもお友達にも、あまり好かれすぎないで下さいね。心配なので。恋人として。』


その紙を僕らに見せてにこ、と照れ笑いする様子はそれはもう可愛くて
敦史の


「あぁ。恋人だからな」


という千秋さんをさらに照れさせようとする意地悪に


「そうですね。恋人なので」


とつい乗っかってしまったのも許してほしい

愛しいだけだから
少しくらいの意地悪はいいですよね


わざとだ、と口を膨らませる千秋さんを宥めるように抱きしめながらその愛しさを改めて実感する

あぁやっぱり
離れられないな

ストーリーメニュー

TOPTOPへ