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暗闇で恋しましょう

第10章 お買い物3

信じ、きょろきょろあたりを見回すも、見えるのは俺に集まる視線だけで。


極めつけに



「お母さん、あの人、迷子ぉ?」

「しっ!」



そんなやり取りが聞こえれば、この放送は俺を指している可能性が嫌という程出て来た。


それでも信じたくない思いの方が強くて、視線から逃れようと足を雑貨屋に向けようとした時。



『あ、あの、お名前は本当に……』



遠慮気味に発せられたひそひそ声。


恐らくその場にいるであろう、放送を流して欲しいと頼んだ人への確認。


それに応える声。


それは、確実に






『大丈夫です。名前流したら怒られちゃうんで』






俺を現実に戻したそいつの声だった。





俺の体はすぐに方向転換。



『そ、そうですか……お、お連れ様がお待ちです。1階、インフォメーションまでお越し下さい』



まさか1日に2度も走ることになろうとは。


でも、あいつもあながち馬鹿じゃないらしい。


確かに、名前さえ告げず特徴だけの放送ならば、流してもなんの騒ぎも起きない。



だがな、だが!!





いくらなんでも









恥ずかしすぎるわ!!









30代にもなって迷子……


そんな視線をそこら中から感じながら、俺は1階へと急いだのだった。

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