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暗闇で恋しましょう

第12章 1つ、また、1つ 嫌な、こと

音を立てぬようそぉっとドアを開ける。


その時点で、いつもなら見えてる筈の杏の姿は確認出来ず。


やっぱり取り越し苦労か、と肩を落とす。


でも流石にここまで来て、姿見ずに戻るのもおかしな話だ。


部屋は狭い。


布団の位置を考えれば、靴を脱がずとも姿の確認はできる筈。


部屋に足を踏み入れなければ、口実であった忘れ物など取りに行けるはずもないのだが。


そのことなど既に俺の頭にはなくて。


開いた少しの隙間から顔を覗かせ、視線を布団の場所に移す。


しかし、どうにも杏の姿が見当たらない。



…………?



予想外の光景に頭はクエスチョンだらけ。


もしかして……



1人でかくれんぼでもしてんのか?







…………はぁ?



なんの緊張感もない自分の考えに、思わず眉間にシワを寄せる。


逃げたんじゃ、ならまだしも。


杏に完全に感化され、平和ボケを起こしている。


自分と杏の立場、今1度自分に言い聞かせる必要があるらしい。

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