暗闇で恋しましょう
第13章 情けない
会社の1室。
自分のデスクに座り、スマホの画面を見詰める。
その画面には、ある奴からのメールが映されていて。
もう何度目か分からない溜息が口から零れた。
Sub 頼み事
From 甘夏飛翠
仕事中、悪い。今すぐ俺の部屋、行ってくれないか。杏が、泣いてる。俺、抜けれない仕事入っちまって、本当、ごめん
“抜けれない仕事”、そこにもう違和感しか感じない。
例えそれがあった所で、飛翠だったら簡単に抜け出せるだろうに。
それは飛翠も思ったらしく、1分も経たぬうちに追撃メールが1件。
Sub 追記
From 甘夏飛翠
嘘、吐いた。抜けれない仕事なぞ、ない。ただ、俺に、自信が、ないだけ
情けない。
思うけど、飛翠が言う“ない自信”。
それが、“泣いてる女性1人を慰めること”なんて軽いものじゃないこともはっきり見えている。
だから、ずばりとも言えないこの境遇。