暗闇で恋しましょう
第3章 貴方の優しさは私の本音を隠す
ふいにふわりと鼻に入って来たのは優しい匂い。
誘われる様に目を開ければ、こちらに向かう足が見えた。
ぼーっとその足を見詰めながら、なかなか体を起こせないのは、妙に温かいから。
それどころか、またも眠りが誘ってくる。
あと、もうちょっと...
思い、再び、目を瞑ろうとしたが、優しい匂いは鼻を刺激し続けて。
ぐぅ.....
どうやらお腹は眠らせてくれないらしかった。
仕方なし、目を擦りながら体を起こせば、ぱさりと何かが落ちた音。
そちらを向けばタオルケットが目に入った。
「あ、起きた?おはよう」
「......おはよう。これ、水上さんが?」
「うん。あのまま寝ちゃったから」
「......ありがとう」
「どういたしまして」
にこりと笑って、ぽんぽんと頭を2回優しく叩いた水上さん。
きっと、着ているこの服も着せてくれたんだろう。
甲斐甲斐しいにも程がある。
その理由が、“水上さんが優しいから”。
それだけじゃないこと、私は知っている。
これは、私に対しての水上さんなりの“罪滅ぼし”なんだ。
あの時、助けてあげられなかった
その胸からの罪滅ぼし。