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暗闇で恋しましょう

第21章 話をしようか

その息に混じって微かに聞こえた声。



「そろそろ潮時かな」



何が?


思うも口にはしないという怠惰ぶり。


ゆるりと顔はそちらに向けたのだから、よしとしてほしいものだ。


まあ、できないようで、あの水上さんの苦笑いが見えるけど。



「ねぇ、杏ちゃん。話をしようか」

「………話?」



緩い意思でした。お疲れ様です。


でも、穏やかながらも強い口調に反応せざるを得なかった。



「そう。お話」

「………」



なんの、とは聞かずして分かる気がして。


私は寝ていた体を起こし、水上さんを正面から見据えた。


それを見届け、一呼吸。


水上さんは、口を開いた。




















「これは、ある男に救われた男と、ある男女の悲しいお話です」







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