暗闇で恋しましょう
第3章 貴方の優しさは私の本音を隠す
「はいはい。ありがとうございます」
想像してた言葉とは大分違うそれに、今度は私が怪訝そうな顔をする。
「......信じてないでしょ」
「なーんか、その言葉、何回も聞いてる気がするんだよなぁ。杏ちゃん知ってる?繰り返される程、有難味ってなくなるんだよ?」
「いやいやいや、逆だよ。逆。何回も言うってことは、本心って言う」
「はいはい。ご飯食べるよー。お腹の虫、鎮めなきゃだしねー」
軽く遮られた挙句、触れて欲しくなかったところを触れられた。
起きた時のあれ、聞こえてたかぁ....くそぉ.....
若干、恥ずかしかったから、聞こえてて欲しくなかったのに.....
そんな私の心中を読んだかのように、水上さんはにやりと笑うと頂きます、と手を合わせ、魚の骨を丁寧に綺麗に取り始めた。
仕返しをされてしまった。
まあ、そこは水上さん大人だし、勝ち目ないし良いんだけど。
私の言葉を軽く流されたのは気に食わないなぁ
むぅと口を尖らせながらも、魚ならば自分も早く骨取りに専念せねば。
いつ食べられるか分からなくなってしまう。
不満たらたらながらも、箸を構え、骨をとろうとし、気付くこと。
私の前にある魚。
骨っこ1つ、見当たらなくて。